トヨタの撮影日記 二月中旬、日本のCMプロダクションから電話があり、車のCFの衣裳制作を受けた。 3月4日、日本からスタッフがロケハンのために来仏し、打ち合わせ。CMディレクターからコンテの説明を受ける。 「ジャン・レノ氏は毎日、人魚像の噴水のある広場を車で通っていた。ある日彼が通りかかった時、その人魚像がレノ氏にウィンクをする。すると、噴水から吹き上がる水の粒が空中に浮かんだまま、突然時間が止まってしまう。
ジャン・レノ氏が宙に浮いた水の粒をかき分けながら女性に近づく中、人魚の精は「ずっとこの時を待っていたの」と心の中で呟くのだった。 車にエスコートされ助手席に乗った彼女が、噴水の人魚像に向かって再びウィンクをすると、時間が再び流れ始め、2人を乗せた車は走り去っていく・・・というCMである。」 その晩から、デザイン画を描き始める。 |
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3月6日、人魚の精の衣裳デザインを選んでもらうため、日本に帰国したCMディレクターやスタッフにデザイン画とコメントをメールする。 それから、衣裳の生地の候補を探しスキャンして、これもスタッフ全員にメール。 お薦めは96%シルクの薄いストレッチ生地である。薄くて軽い透け感が美しく、人魚の精のイメージにぴったりなのだが、色が鮮明なグリーンなので、脱色して使いたい旨説明を添える。 クライアントを交えてデザイン画、生地が確認され、OKが出る。(衣裳のうろこの飾りを撮影のアングルの都合で右側に変更出来ないかとの依頼があり、もちろんOKして変更することにした。) それから青銅像の色に近づけるためシルクの生地を煮込みながら脱色していく。スタッフ間の共通イメージとなっている人魚像は、ロケハンでCMディレクターが選んだパリのコンコルド広場の人魚の青銅像である。 |
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モデルが選ばれると、すぐに会って採寸をする。そのサイズ、デザイン画、生地のサンプルなどを渡してドレスのパターンをパターンナーに発注し、アクセサリーの素材探しに入る。ゴールドの貝のパーツなどアクセサリーは青銅色に腐食させる塗料で加工する予定。 美術セットデザイナーがモデルの顔のマスクを取るというスタジオに、仮縫い用の生地で作られたドレスとアクセサリーを持ち込み、第一回めの仮縫い。修正したパターンと生地を今度は縫製スタッフに渡す。 美術デザイナーがモデルの顔のマスクと私のデザイン画から人魚像を作り始める。撮影後にぴったり合成出来るように、モデルと人魚像は全く同じフォルムに仕上げることが要求されている。像に埋め込んでもらうために、アクセサリーのパーツを美術デザイナーにも渡す。 |
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3月13日、縫製スタッフの家で本番用の生地での仮縫い。襟やスカートのラインやうろこの飾りなど、細部を修正。裾あげなどの最終の仕上げをしてもらっている間に、撮影用レンタルショップで透明のサンダルを借り、その靴に飾る花などを作る。 3月17日、撮影スタジオでのカメラテスト。CMディレクターや撮影監督らと最終の打ち合わせ。うろこの飾りの位置をずらし、数を増やす。 3月18日、人魚像&人魚の精のシーンの撮影が国立美術学校の中庭で行われる。 |
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